PC-6001 SCREEN MODE4 の色滲みを調べる

PC-6001のSCREEN4では2色しか扱えませんが、色のにじみを利用したゲームがあります。その原理を調べていくうちに、色々な事がわかったのでまとめてみます。

PC-6001のVDGは、三菱製のM5C6847P-1という、モトローラMC6847の互換品です。このICからは、Y、φA、φBという輝度/同期信号と2つの色差信号が出ていて、それを元にPC-6001内部の回路でコンポジットビデオ出力に変換しています。以下の調査は、モトローラMC6847の信号を調べたでのはなく、初代PC-6001本体背面のビデオ出力(コンポジット出力)の信号を調べたものとなります。

一番最後に結論が書いてあります。読み飛ばしてもおっけーです。

予備知識:PC-6001のビデオ出力信号

PC-6001では1本のケーブルで映像信号を流しています。テレビの黄色い端子に繋げられるケーブルです。

映像の横方向の信号、つまり、左端から右端までの高さ1ドットの映像信号は、こちらのリンク先の図の通りです。

NTSC Video With VHDL

縦軸が信号の電圧、横軸が時間です。

今回の話で重要なのは、上記図中のActive Videoと書かれているテレビ画面上に表示される箇所と、信号の左側(先頭側)にある塗りつぶし部分を拡大した下部の図中のColor Burstという箇所です。

Active Videoの箇所の信号が変化すると、それに対応して画面が変化します。テレビ画面は左から右に,上から下へと走査されて描かれるので、テレビは外部からの映像信号を読み取りつつ画面に表示するという処理になります。

PC-6001のVDG内部と端子部分では、輝度/同期信号と2つの色差信号が出ています。RGBではありません。3つの色に関する情報と同期情報から1つのビデオ映像信号を作っているのですが、1つの映像信号に複数の信号を乗せるので、それだけ仕組みは複雑です。

輝度情報

昔の白黒テレビは輝度情報だけでしたし、カラーテレビから色を取り除くと白黒になるように、色がなくても輝度情報だけあれば、映像として成り立ちます。白黒テレビといっても白と黒の2種類というわけではなく、白から黒の間の色もあります。テレビの1ドットを、どの程度の明るさで表現するかという情報が輝度です。明るさの量の変化ですから、映像信号は単純な波形の変化で表せます。先のNTSCの図のActive Videoの箇所が上下に変化するすると、それに合わせて画面の明るさが変化することになります。1ライン分の映像(図の上部)を波形でみるとこのようになります。

グラデーション

白黒写真の一ライン分

白黒2色

(※図では、わかりやすくするために映像部分に高さの幅を持たせてありますが、実際には高さ1ドットの線です)

ブラウン管テレビは、横方向に左から右へと走査されて映像が映し出されますが、その走査は連続してます。ですから、厳密な1ドットという区切りはなく、連続しています。ドットをハッキリさせるために、ブラウン管の表面(内部?)に網目状のマスクを貼ってある場合もありますし、カラーテレビは3色の輝点が並んでいるので、連続しているように見えない場合もあります。

映像信号を細かく変化させられば、それだけ細かい表現ができるようになります。映像の横方向の細かさは、映像信号の変化の度合いで決まるということです。その信号の変化の速さに、ブラウン管が、どの程度ついてこられるかはわからないのですが、ビデオ映像信号は仕様として厳密に決められていて、ブラウン管もそれに従って作られていますから、仕様上の数値が表現上の上限値となります。ちゃんと調べてないのですが、波形の最大周期は4.2MHzです。(今回の話では、その辺はさほど重要では無いのでちゃんと調べてません。間違っていたらすみません)

上の図の「白黒写真の一部」のような複雑な輝度の変化では、波形がウネウネとしています。この波形が4.2MHzの周波数まではOK、という解釈になります。それ以上の高周波、つまり、4.2MHz以上の波形の変化は認めないということですし、仮にあったとしても画面に映し出される時には(サンプリング時は)異なった波形になります。

また、先のNTSCのActive Videoの図をみると、表示時間は52.6マイクロ秒です。ここに4.2MHzの信号の変化を表示できるということになるので、計算すれば、輝度の解像度の上限値が出てきますね(計算は省略します)。ただ、実際には他にも色々な条件があるので、そこまでの解像度がでないようです。例えば上図の白黒2色の信号は白から黒への変化がまっすぐに落ちていますが、映像出力側の機器はこんなに素早く電気信号を変えられないですし、テレビ側も一瞬で輝度を下げられないので、白と黒の間にボンヤリとした映像が出てきます。

色情報

輝度信号は映像信号の上下変化で表しますが、そこに色情報をのせるには一工夫必要です。単純に説明すると、高い周波数の色に関する信号を、輝度信号に混ぜ合わせます。とはいっても、輝度情報に色情報を混ぜると信号の分離できなくなってしまうので、色の変化を輝度信号のように単純な波形として表すことはできません。

そこで、色情報は、3.579545...MHz(以後3.58MHz)の正弦波を使って、その正弦波との位相差で表します。色によって周波数を変えるのではなく、色によって異なる位相で表します。位相差なので、何かしらの基準となる正弦波が必要になりますが、それが3.58MHzの正弦波信号で、これをNTSCの水平信号の最初の方に乗せています。NTSCの波形図では、Color Burstという名前がついてます。

NTSC Video With VHDLの図の通り、信号の最初の方(左側)にColor Burst信号が2.5マイクロ秒だけ送られてきますが、テレビ側では、これを読み取り、Color Burst信号が終了した後も、この信号の波形が延々と出続けているものとして、Active Video信号部分から3.58MHzの信号分読み取り、そこで得られた波形がどれだけずれているか(位相があるか)を調べて、色を決定します。3.58MHzの正弦波1周期分で色が定まります。

なぜ3.58MHzなのかにはちゃんとした理由があるのですが、ここでは省略です。

色情報は、基準波形との位相差で表すのですが、この情報には、色の種別と色の鮮やかさが含まれています。この辺を導き出す数式があるのですが省きます。色の種別は、こちらの図が参考になります。NTSCの映像信号はIとQという軸で色を表します。

NTSC Color Signal

なんで色差信号から33度傾いたIQ軸なの?というのにも人間の目の色に対する感度とかの理由があるのですが省略です。 このようにして決めた色信号を、輝度信号に重ね合わせます。つまり、輝度の映像信号に3.58MHzの色信号(色によって位相差がある)が加わっていることになります。

色信号と輝度信号の合成と分離は、まるも製作所さんのITU-R BT.601 についてに詳しく書かれていますので参考になると思います。リンク先ページの「NTSC 信号からの A/D 変換例」のところにカラーバーの図がありますが、カラーバーの白以外の信号の波形が上下に細かく変化していますよね。これが3.58MHzの色信号(位相差を含む)で、ここから3.58MHzの色信号を取り除くと輝度信号だけが残ります。

色信号は3.58MHzの正弦波の振幅で鮮やかさ(彩度)を、位相で色の種類(色相)を表します。

3.58MHzを考察してみる

輝度信号は4.2MHzまでの明るさの変化が許されますが、その映像信号上に色信号の3.58MHzが混ざるというのはおかしな話です。もし、輝度が3.58MHzの波形で変化していたら、色信号との分離が出来なくなるんじゃない?という疑問が出て来るのですが、その通りです。本来は輝度情報なのに色として判定されると、元の映像には無い色が出る事になります。また、逆に、色情報なのに輝度情報になってしまうケースもあります。前者には「クロスカラー」、後者には「ドット妨害」という名前がついてます。これらの用語で検索してみると、実例画像がみつかります。

NTSCの亡霊、ドット妨害とクロスカラー

これらの現象は、輝度情報と色情報が1本の映像信号上に流れていることで発生するので、輝度と色を別々の信号として送り出すS端子やD端子では発生しないのですね。

映像信号上に3.58MHzの色信号を乗せている、ということは、映像を表示している時間内に、どれだけの色の変化を記録できるのかを計算できることになります。MC6847のデータシートによると...

MC6847の表示領域(ACTIVE DISPLAY AREA)は35.76マイクロ秒です。また、色信号の3.58MHzという数字は、色々な理由から(315/88)MHzが元になっているので、これらを使って計算すると、35.76×315/88 = 128.004545...となります。表示領域内の映像信号には、1周期が3.58MHzの正弦波を128個並べることができる、ということは、128個の色を配置出来る、つまり、横方向には128ドット分の色を配置できるというわけで、狙い澄ましたような綺麗な数字が出てきました。

3.58MHzは映像信号の仕様として決められたものですから、これを変えることはできません。つまり、横方向の色の解像度の上限は計算から決まります。逆に考えるとPC-6001のメモリで扱いやすい128個分のドットを表示するために、表示領域(ACTIVE DISPLAY AREA)を35.76マイクロ秒にしたとも考えられます。→ 追記:ここ、ちょっと自信がありません。カラーバースト信号との位相差で色を決められるのであれば、1周期単位でなくテレビ側の任意のタイミングで色を確定できるような気がします。テレビのドットピッチ単位や輝度信号の解像度に合わせるとか。映像の表示時間も、1ライン分の表示時間は固定ですが、PC-6001の外枠部分を減らせば表示領域は増やせます(1ドットの横幅が変化する)。そう考えると、Color Burst信号の3.58MHzに合わさるように輝度信号を決めて、そこから映像の表示時間を算出したようにも思えてきます。ですので、PC-6001のVDGではこうなっているという想定で話を続けます。

PC-6001のVDG(MC6847)の解像度仕様

PC-6001のBASICから扱えるグラフィックを扱うモードは大きく2つあります。

MODE横ドット数縦ドット数
SCREEN3128192
SCREEN4256192

先ほどの計算から、横方向の色の最大解像度は128という数字が出てきました。SCREEN3の解像度がまさにこれです。

一方、SCREEN4は解像度が倍の256です。NTSC信号の仕様に従うと、PC-6001のVDGでは、この色解像度を表示できないはずです。ここがSCREEN4で滲み色と呼ばれるものを表示する重要なポイントです。

SCREEN4 COLOR,,1の映像信号

SCREEN4でX座標が32の位置に1本の縦線を描画して、その映像信号を見てみました。

ついでなので、明るい緑と暗い緑の色を数値で比べてみます。

色合いと鮮やかさは同じで明るさ(輝度)だけが違うのですね。

波形は適当なY座標の位置の水平信号1本分です。左端側の高い位置の波形が画面の枠の部分の緑色です。波形で1本だけ飛び出している箇所が、LINE命令で描画した線(の高さ1ドット分)になります。描画した1本の線は、画面外枠の色と同じ色なので、描画した線の波形の高さ(輝度)が外枠と同じところまで引き上がっています。背の低い波は背景色の色(暗い緑)です。

描画した線はX座標が32の位置でした。波形をみると、枠線の終了位置から1本だけ飛び出した波の間にある、背の低い波の数は15本です。背の高い波は16本目にあります。LINE命令のX座標の半分です。

もう少しわかりやすくするために、8ドット毎に線を描いてみました。

31本の線を描いて、波形全体と、波形の一部を拡大したものです。8ドット毎に縦線を描いたものが波形では4本毎に波が大きくなっているのがわかります。この理由はなんとなく想像がつきます。正弦波の1周期は登って降りてまた登ってで一周ですから、上に飛び出たところだけに注目して数えると半分になってしまうのですね。

さらに半分の4ドット、その更に半分の2ドット、最後は1ドット毎(つまりベタ塗り)で線を描いてみました。

4ドット毎

2ドット毎

1ドット毎

そもそも色信号は3.58MHzに固定されていて、この周波数を使っている限り、MC6847の横方向の色解像度は128ドット固定されます。256ドットを出すには、倍の周波数が必要なので、横256ドットは表現できないのです。それにも関わらず、PC-6001のSCREEN4は横256の解像度を使う事が出来るようになっています。MC6847のデータシートでもSCREEN4では1バイトで8ドット、1ビットで色の指定と記述されています。

では、PC-6001の解像度256ドットは無意味なのかというと、そういうわけではありません。正弦波の1周期は上がって下がってなので、上がるところが1ビット、下がるところで1ビットを使っていると考えられます。2ドット毎で線を描画した時のキャプチャ画像を拡大してみると、ベタ塗りになっています。縞模様にはなっていないのですね。明るい線の色が隣に影響して(滲んでしまって)隙間の背景色が潰れている、とも考えられますが、そもそも横256ドットの解像度が表現できないのですから、2ビットで色を表現しているように思えます。

2ドット毎で線を描いた時のベタ色の値がこれです。

2bitで表現できる色の組合せは...

2bit表示色
00
01
10 
11 

ここまでをまとめると2ビット単位で色が決まる、という結論になりそうですが、そんな単純な話ではありません。

例えば、8ドット毎に縦線を描いた場合、そのビットパターンは10000000100000001000...になりますが、2bit単位で区切ると最初の線は10ですから、上記の表に照らし合わせると中間的な明るさの線の色になってしまいます。でも、実際に描かれた線は外枠と同じ明るさの線がちゃんと表示されるので、2bit単位で色が決まるという推理はハズレです。

輝度信号は波形の変化に追従します。例として、4ビット毎の線を描いた時の波形との関係をみると、VRAM上のビットの並びは1000100010001000...となるので、波形と照らし合わせると、

最初の1のビットでは輝度が高く、続く3つの0のビットでは輝度が落ちてはいるのですが、色信号は3.58MHzで振動するので、少しだけ上に上がっているのです。この4ドット毎ラインの画像から、色信号を取り除いて輝度信号だけをみると、

ほんの少しだけ、明るい箇所の輝度が外枠よりも落ちていますが、輝度の高いところと低いところを上下しています。

これが2ドット毎に縦線を描いた場合、ビットパターンは10101010...ですから、これを波形に重ねると、

高い輝度と低い輝度が一定間隔で変化します。色信号はどこにいってしまったのかというと、この波形自体が色信号です。つまり、 2ドット毎に縦線を描いた場合、輝度の変化の波形が3.58MHzになり、そこに重ねられる色信号も3.58MHzとなるので、ぴったりと重なってしまうのですね。 これは、色信号の説明のところで書いたように...

MC6847の表示領域(ACTIVE DISPLAY AREA)は35.76マイクロ秒です。また、色信号の3.58MHzという数字は、色々な理由から(315/88)MHzが元になっているので、 これらを使って計算すると、35.76×315/88 = 128.004545...となります。表示領域内の映像信号には、1周期が3.58MHzの正弦波を128個並べることができる

ということなので、輝度信号が01010101...のように変化すると3.58MHzの波となってしまい、色信号と同じ波形になります。

確認するために、緑色で塗りつぶした画面の波形と、1ドットおきに縦線を描いた(白黒白黒白黒白黒...という映像)の波形をみてみると同じ周期です。

輝度を整えて信号を重ね合わせてみると、

完全に一致です。

この、輝度と色信号が重なってしまった映像信号から、色信号だけを取り除いて輝度信号のみにすると、

輝度が上下に変化していたはずなのに、それが色成分として勘違いされて、残った輝度信号は平らになってしまいます。輝度の縞模様ではなく、同じ明るさがべったりとした信号です。 波形の左右のレベルが上がっている箇所が画面の外枠部分ですから、2ドット毎に縦線を描いた場合は、外枠よりも少し暗い色で塗りつぶされる事が波形からも読み取れます。

SCREEN4 COLOR,,1の色情報を掘り下げる

話がややこしくなるので、ここまで意図的に避けてきたのですが、縦の線を描く位置を奇数にすると、緑色ではなく、赤っぽい線が表示されます。1本だけだと判りにくいので、全画面を2ドットおきに奇数位置から(X=1から)描いてみます。

茶色のようなオレンジのような、なんともいえない色ですが、キャプチャ機器やテレビによって見た目の色はまちまちです。

ところで、PC-6001本体に付属してくるN60BASICの活用表では、色についての記述があります。

文字色背景色色セット文字またはグラフィックスの色
101黒地に緑
011緑時に黒
102黒地に白
012白地に黒

この表はBASICでの色指定方法なので判りにくいのですが、4種類のどの組合せでも同時には2色しか出せないということになっています。ただ、実際には、上記のキャプチャ画像のように、マニュアルには掲載されていない色が使える、というか、奇数位置にドットを置くと、 その箇所は上記のような色(以後、赤と表します)になってしまうのです。ただし、奇数位置に描画したからといって、必ず赤色になるわけではありません。その左の偶数位置にドットがあると緑色になります。これは全画面をペイントすれば緑だけになるのでわかりますね。つまり、緑と赤の線を1ドット単位で交互に描くことはできません。

映像信号上ではどうなっているのかというと、位相変化なのでちょっと判別しにくいです。1本だけ線を描いた時の波形を並べてみました。

2枚の画像を重ねてみました。赤い線が奇数座標に線を描いた時の波形です。

32の位置では輝度のビットデータが0なのですが、33の時には輝度のビットが1に変化します。その直後に再び輝度が0に戻るのですが、 緑の色信号が上がるので、結果的に緑とは異なった波形になり色差となります。これが緑以外の色が出る原因です。

参考用として、X座標が32と33の両方に線を描いた場合の波形がこちら。

もう一つ、X座標が33と34の両方に線を描いた場合の波形がこちら。

こうしてみると、SCREEN4で色が出るという現象は、発色の仕方をコントロールできるので意図的に作られているように思えます。VDGの設計してたらこうなってたという偶然の産物かも知れませんが、それはICを設計した技術者の方に聞いてみないとわかりません。

SCREEN 4のもう一つのカラーセット

SCREEN4には、白と黒のカラーセットもあります。

文字色背景色色セット文字またはグラフィックスの色
101黒地に緑
011緑時に黒
102黒地に白
012白地に黒

このカラーセットの波形をみてみると...

黒地に縦の白線を8ドット間隔で描画しているので、映像信号部分に色成分がないのはわかるのですが、なんと、信号の先頭部分にカラーバースト信号がありません。どういうことかというと、このカラーモードでは色を付けないように信号が出力されているのです。ですから、初代機のSCREEN 4のカラーセット2では色信号が出ていないので白黒(輝度信号だけのグレースケール)で表示する、ということになります。色は存在しません。

さて、これで一通りの調査終了、としたいのですが、SCREEN4のカラーセット2は、オリオン、EGGY、ミステリーハウスなどで使われている画面モードです。これらのゲームを実際に遊んだり、雑誌の広告写真をみると、ちゃんと色ずれや滲みといわれる色がついていますよね。

我々は幻をみていたのか・・・?

ブラウン管と液晶テレビで試してみた

白黒画面であるはずのSCREEN4 カラーセット2、1ドット間隔の縦線画面をUSBキャプチャ機で取り込んでみました。表示開始位置を奇数と偶数の2つで試しました。

よくみかける画面で、みごとに色がついて(しまって)ます。映像信号に色情報が無いことを知ってしまうと、色がついているのが不思議でなりません。

これはもう、USBキャプチャ機が勝手に色を判定して勝手に色をつけていると考えて良いでしょう。そもそもカラーバースト信号が無くても、映像の同期信号から映像開始点と終了点がわかるので、キャプチャ機内部もしくは取り込みソフト側で3.58MHzを勝手に想定すれば、色の取り出し処理は可能です。

ちなみに、キャプチャ機とPC-6001をつなぐタイミングによっては、色がなくなります。

この状態からページ切り換えなどで色のある画面に切り換えると、以後は白黒モードの映像にも色がついたままになるので、内部的に色の有無を判定しているようです。ただ、白黒状態でも1ドット毎の縞模様にはなっていないですね。色の解像度が輝度の半分しかないか、このUSBキャプチャ機では取り込み時に何かしらの映像圧縮をしてると思うので(USBには非圧縮で映像を流すほどの帯域はないと思います)、その影響かもしれません。

次に、液晶テレビにつないでみました。

見事な白黒縞模様です。白黒映像を送っているので白黒で表示されるのが正解です。更に最近のテレビは本当に性能がいいので、ビデオ出力どころかRF出力さえノイズや滲みを綺麗に消し去ってくれます。代償として遅延が出たりしますが。

次に、SHARP CZ-600DEというブラウン管テレビにつないでみた場合の動画です。

最初は白黒だった映像が、途中から青色がつき始めます。無理してくれてる感じが伝わってきます。これを奇数位置から縦線を描くようにすると、 画面上部側だけ色がついて、下側は白黒という不思議な壊れたテレビのような状態になります。運が良いと?安定して色がつくこともあります(青と緑ですが)。

結論として、一部のテレビやUSBキャプチャ機では、カラーバースト信号がなくても色があるかのうように機能して色が付くようになるのだと思います。その場合、1ドット毎にドットを置くと(線を描くと)、白黒の点(線)の並びが輝度信号→色信号となることで色がつくという仕組みです。色がずれる、滲む、というより、そのような仕組みになっているのですね。

では、滲みがまったくないかというと、ブラウン管の場合はありえます。輝度の電気的な信号変化は電圧を加えたり減らしたりする時間の影響で曲線状になります。010のように輝度を変化させても、矩形波にはならず、曲線的な線になりますから、それがそのまま画面上に現れてきます。また、画面上のマスクから光が漏れて隣に影響するケースもあります。

ブラウン管の見た目を液晶テレビで再現するには、画面サイズが同じでもDPIの高い液晶を使わないと表現できないですし、黒ビキ、斜めビートのような独特の現象が現れるので奥深いです。

PC-6001mkIIだとどうなの

SCREEN4の白黒モードの波形を見てみました。

白黒モードでもカラーバースト信号がありますから、テレビ側はカラー信号だと識別して映像信号を処理します。つまり、mkIIでは、1ドット毎の縞模様の並びを描画すると、輝度信号が色信号化され、いわゆる色滲み、色ずれといった現象が必ず発生します。

波形全体をよくみると、カラーバースト部以外でも常に3.58MHzの信号が乗っていますね。すごい作りだ。

PC-6001mkII背面には、白黒テレビ/カラーテレビ切り換えスイッチがあり、それを切り換えることで白黒画面になります。上記の結果からなんとなく想像がつきますが、

このように、カラーバースト信号だけでなく、波形全体から3.58MHzが消えます。

結論

PC-6001初代ではSCREEN4 白黒画面色モードで色がつかないのが正しい。ただし、色が付いてしまうテレビもあり、その方がPC-6001的には好ましい。 → ビデオ出力ではなく、RF出力の場合、白黒モードでも色が付く可能性があります。未調査ですが下記で補足説明してます。

PC-6001mkIIではSCREEN4 白黒画面色モードでも色が付くのが正しい。白黒モードで色を利用したオリオン、EGGYといったゲームを遊ぶにはPC-6001mkIIの方がよい。ただし、初代PC-6001にあった画面の枠の部分が黒くなっているので、初代PC-6001とは画面の雰囲気が異なる。

補足

輝度信号を3.58MHzで変化させると色信号になるという仕組みは、MC6847独特の特徴ではありません。PC-6001が発売されるよりも前、1977年発売のAppleIIで、この現象を利用した色付けが利用されています。MC6847がいつ頃に作られたのかはわかりませんが、MC6847を搭載したAPF IMAGINATION MACHINEというゲーム機兼パソコンが1978か1979年に発売されていたようです。

MC6847は同期信号、輝度、2つの色差信号を出力しています。ビデオ出力もしくはRF出力はないので、何かしらの外部回路が必要になります。モトローラからも専用のICが出ていて、MC6847のデータシートに回路図と共に記載されています。バースト信号の3.58MHzの生成はMC6847ではなく、外部のビデオ/RF回路側の処理(外部の振動子を接続)になります。→MC6847のデータシートを確認したところ、MC6847がColor Burst信号を生成しているようです。画面モードによってColor Burst信号がOFFになるとも記載されているので、コンポジットビデオ/RFモジュレータ以前の段階でColor Burstの生成がされていると考えてよさそうです。

MC6847のデータシートには、各画面モードでの色と、アトリビュート値による色差信号の出力電圧が書いてありますから、それを元にしてRGBへの変換値を計算できるはずです。ただ、それだとビデオ出力の映像とは違った結果になるので、ここでは検討しません。

PC-6001には、NECから専用モニタのPC-6042Kが発売されていました。コンポジットビデオ入力端子でPC-6001と接続できるメーカー公式のモニタなのですが、PC-6001の白黒画面モードで接続した場合、「色が出ない」、「輝度やコントラストを調整しないとモノクロになったり突然カラーになったりと不安定」となるようです。

PC-6001mkIIをRGB接続した場合、起動時のモードを1-4のいずれかにしてPC-6001初代機互換状態にしても、綺麗な白黒画面にしかなりません(輝度信号が色信号になるような事が起きない)。ちなみにPC-6001mkII以降の機種に搭載されている映像回路(IC)はNECのカスタムチップです。

RF出力

初代、mkII, 6601にはRF出力端子があります。初代のSCREEN4白黒モードをビデオ出力でテレビに接続して色が付かない場合でも、RF出力でつないだ場合は色がつく事があります。手元のブラウン管テレビCZ-600DEでもビデオ出力接続だと白黒か、不安定な色で表示されたものが、RF出力だと比較的安定して色がつきました(たまにちらつきますが)。

RF出力でもSCREEN4白黒画面モードの場合はColor Burst信号が出ていないようなので、本来は、ビデオ出力同様に色が付かないはずです。ですので、ここからはテレビ側の処理に依存する話で、テレビ内部でどのような事をしているのかは推測するしかないのですが、おそらく、白黒テレビ放送は1977年頃に停止していて、アンテナから流れてくる信号はカラー映像であることが間違いないので、カラーバースト信号が不安定な場合でもカラー信号として補正するような仕組みが入っているのではないかと思われます。

ですので、PC-6001初代で白黒画面モードで色をつけたい場合は、ビデオ出力ではなく、RF出力接続をオススメします。テレビ側にアナログ地上波のアンテナ端子が必要ですが、HDDレコーダのようなデッキにアンテナ端子があれば、レコーダからテレビにつなぐ配線方法によっては、RF出力→HDMIみたいなアップコンバートも可能ですし、ついでに録画もできますね。ただ、テレビによってはPC-6001の映像同期信号をうまく補足できず、映像が不安定になる場合もあります。

RF接続だとビデオ出力よりも映像が汚くなるようにも思えますし、当時の実体験と記憶ではそうだと思いますが、最近のテレビは高性能で信号補正が優秀なので、ビデオ出力と比べても、それほど画面の綺麗さに違和感がないです。ケーブルも簡単に作れますし、周囲の電気的なノイズを拾いやすい点にだけ注意すれば大丈夫です。

PC-6001mkII/6601にもRF出力端子があります。RF接続でテレビにつないで本体背面の白黒スイッチを有効にすると、どの画面モードでも画面が白黒になりました。上と同じブラウン管テレビを使って確認したので、白黒画面モードであってもカラー画面にしようとするのかと思ったのですが、そうはなりませんでした。この辺の仕組みはやっぱりよくわかりませんし、PC-6001mkIIの場合、上記の調査のように、SCREEN4白黒画面モードでもビデオ出力端子からカラーバースト信号を出しているので、RF接続する意味はないと思います。